こんちゅう

エッセイ・小説・ブログ・楽譜置き場。 不定期更新。

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<<プロローグ

日光がぎらぎらと照りつけるなか、僕たちは汗だくになりながら坂道を下っている。今日は7月22日、終業式の日。つまるところ夏休みの始まる日だ。

僕たちは先ほど終業式をおわらせ、家に帰っている途中だ。

「はあ、やっと学校も終わりだぜ。今日から何して遊ぼうか」

ふとっちょの慶介が汗を拭きながら話す。

「それならさ、海水浴に行こうよ。今まで忙しくて全然行けてないし」

「ほら、ユーコや慶ちゃんはそうやっていつも先に遊ぶことばっかり考える」

隆信があきれ顔でものを言う。「早いうちに宿題を全部終わらせちゃうのが夏休みを目いっぱい楽しむコツなのさ」

「いいもん、どうせ最終日にタカに写させてもらうから」

何だと、と隆信はカバンを振り回す。このクソ暑いのに元気なものだ。

「・・・まぁとりあえず、帰り次第例の場所に集合ってことで。何をするかはそれから決めよう」

僕達4人は目を合わせる。僕達だけの秘密の場所。この島にいる大人達には決して知られていない僕達のアジト。そこでなら、大人達の目を盗んでなんだってできるんだ。

 

 

集落に入り僕たちは一旦分かれ、家で昼飯を食べた後、僕は「例の場所」に向かった。

この人口500人足らずで、端から端まで2kmくらいしかない小さな島は、お椀を逆さにひっくりかえしたような形をしている。つまり、中央に行けば行くほどきれいに標高が高くなっていくのだ。そしてその頂上には、例の大きな時計台がそびえ立つ。

僕たちの集落は海に面した比較的平らな場所にあり、港もある。船は1週間に1回、僕たちの生活に必要な品を届けてくれるだけで、よっぽどのことがない限り人の出入りは禁止されている。そういった理由で僕たちは、TVとかで見ることはあっても、外の世界に出たことは一度もない。

 

僕は時計台に向かって坂道を上っていく。礫の転がる荒々しい小道は、ところどころ雑草が伸びている。海風と鬱蒼とした草むらのせいで、夏場はやけにじめじめとするのがこの島の宿命だ。

山のちょうど中腹くらいまで進むと、両脇に生えているとある木と木の間に、僕達の秘密基地への入り口がある。普段は茂みによって隠されているのだけれど、それをかき分けると、すぐに窪みになっていて、人一人分くらいの小さな「根っこのトンネル」が現れる。木の根っこが、すぐ頭上に何十本も張り巡らされていて、まるでトンネルのように僕を隠し、そして導いてくれる。

長い長いトンネルを抜けると、少し開けた明るい場所にたどり着く。すぐそばでは小川が流れていて、十分に遊べるくらいのスペースもある。そう、ここが僕達の秘密基地だ。

 

 

「おせーぞ武」

なんと、僕以外のメンバーはもうすでに到着していた。実はこの秘密基地にはいくつかのルートがあって、中には僕ですら知らないものもある。もしかしたらそっちから来たのかもしれない。

「悪い、いろいろ準備してたら遅くなって」

僕は3人のところへ駆け寄る。そこらの木材やテントの布で作った簡易ハウスは案外快適で、僕たちはいつもその中でくつろいでいる。

 

「さて、何をしようか」

「まずは水遊び!」

「野球やろうぜ、野球」

「いや、まずは宿題でしょう」

・・・やれやれ、こいつらはもう15歳なのにまだ子供っぽいことを言うもんだ。

「・・・で、武はどうなんだ?」

 

 

「ボートを作ろう」

僕は高らかに宣言した。

 

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2016/7/17