こんちゅう

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量子情報科学入門(一日一冊、2/28)

数物セミナーのすべての工程が終わった.これから,この「一日一冊」企画の集大成を始めたいと思う.

 

「量子情報科学入門」(石坂智 ほか,2012,共立出版)この本は,最近話題の量子コンピュータの数学的原理を学ぶ本である.「一日一冊」企画としてこの本を紹介するというのが,実はこの企画を練っていたころからの野望だったのだ.

量子コンピュータはもちろん量子力学に立脚しているが,この本は(一応)量子力学を未修の人でも読めるような工夫がなされている.が,おそらく量子力学をやってからこの本を読んだほうが何倍も良いであろう.
量子コンピュータの原理とは何か.量子力学特有の重ね合わせという状態と,時間発展はユニタリ発展であるという特性を生かしているところに最大の特徴がある.これにより,従来の古典コンピュータでは指数オーダーかかるような問題も,(問題によるが)多項式時間で解決できるのだ(ことがある,と表現するほうが正しいかもしれない).

もちろん完璧な実用化までは(デバイスが出来ていないため)ほど遠いかもしれない.が,今の技術発展をみるに近似系や少し簡単なモデルで可能な面もあるし,なにより今から理論を詰めることにおいて早すぎるということはない.この本は量子論の基礎について詳細な説明もなされているし,行間も少ないのでオススメだ.量子コンピュータに興味があり,量子力学のことはじめを勉強した人は,是非チャレンジしてみてはどうだろう.

 


というところで,この本をもって「一日一冊」企画は終了としたいと思う.途中抜け落ちているところもあるが,私にしては続いたほうなのではないか.
この1ヶ月の総まとめはまた別の記事に書く予定であるので,そちらもよければ読んでほしい.この「一日一冊」感想文シリーズを読んでくださった方全てに感謝する.

 

量子情報科学入門

量子情報科学入門