こんちゅう

エッセイ・小説・ブログ・楽譜置き場。 不定期更新。

村山彩希プロデュース新公演の正直な感想

何が嫌いかより何が好きかで自分を語れよ!というのはルフィの名言ですが*1,とはいえ「どうしてそれが苦手か?」ということをうまく言語化することができたらそれはそれで人生の豊かさが増える気がします.

今回は,先日初日を迎えた村山彩希プロデュース新公演の感想を正直に書こうと思います.書くべきか本当に悩んでいたんですが,ここ数日新公演のことばかり考えて作業が何も手がつかない状況なので,とりあえず文章にしてみることにしました.あまり気持ちのいいものにはならないので注意してください.また,様々な人の意見も聞いてみたいので,ここが違うんじゃないかなどあればぜひコメントください.

ほとんど劇場公演を見たことはない

まず,自分はAKBにわかファンで,劇場公演は配信で逆上がり公演,僕の太陽公演,現地ではただいま恋愛中公演を1回見ただけです.なので本来新公演についてあれこれ語る立場にはないとは思うのですが,こういう意見もあるんだよーと理解していただければ幸いです.

メンバーは本当に頑張っている

そして,演じているアイドルの方々,支えているスタッフの方々,関わっている全ての方が新公演を良いものにするために本気で取り組んでいるということは,この準備期間中ひしひしと伝わってきました.あらゆるSNSで朝から晩までレッスンで辛いということを目にしましたし,自分の推しは忙しさのあまりこの1週間でモバメを一通しか送ってきませんでした.その結果,新公演初日のメンバーのパフォーマンスは最高のものでしたし,拘った演出の数々は見ていて本当に楽しかったです.こんなに必死にアイドルを演じてグループを盛り上げようとしているメンバーの方々には尊敬の意しか出てきません.

16人公演になって

今回久しぶりに8人公演から16人公演になったということで,変わった点としては

  • メンバーが8人から16人になった(当たり前)
  • 柱でメンバーがほとんど見えない,という状況は少なくなった
  • 1人当たりの自己紹介のパートやMCパートが短くなった
  • ユニット曲の担当が1人1曲になった
  • ほとんどのパートが口パク(あるいはすごく強い被せ)になった

などが挙げられると思います.正直,配信視聴がメインの自分にとってはかなりきつい変化です.単純に推しが映る回数が半減するだけになってしまいました.

特に口パクになったことで推しの生の歌声が全然聞こえなくなったことがショックです.田口さんなど歌唱メンの歌も結構楽しみにしていたのですが,また別の公演やコンサートまでお預けという結果になりました.

ただこれは好みの問題というか,実際2022年までは16人公演で全く同じ構成でやっていたので,16人公演の方が好きだという人も多いでしょう.ダンスナンバーがないことも,狭い劇場や貧相な演出装置のことを考えるとある程度仕方ないことです.

公演ってなんですか

なんでこんなに自分は新公演があまり好きになれなかったのか,ここ数日ずーーっとぐるぐる考えて,他の劇場公演などや自分が好きな音楽・コンサートを見返したりして,ある程度考えがまとまってきました.おそらく一番の問題は,今回のセトリが公演になってないことにあると考えています.

AKBの劇場公演って何なんでしょう.公演は数年ごとに入れ替わり,演者はチームのメンバー,セットリストは完全に固定,秋葉原の劇場で毎日250人を相手に開催する,明らかにライブやコンサートとは性質が異なります.劇場公演の抽選は1週間前と非常に短く,ライブやコンサートのように気合い入れて準備して行く!というよりもむしろ,たまたま当たったからフラッと遊びにいく,という感覚の方が近いのでしょう.

劇場公演って実はミュージカルに似ていて

自分の人生で触れたものの中でAKBの劇場公演に一番近いのはミュージカルの公演です.特に劇団四季が近く,公演は数ヶ月単位で固定,演者はその日ごとに変わります.チケットも割と直前まで取ることができます*2.ミュージカルが聴きたくなったら週末のチケットを取ってフラッと劇場に寄って楽しむ,といったことが可能です.

公演には必ず流れがある

ミュージカルの曲の構成は大抵同じです*3.まず初めにovertureといって,ミュージカル全体のイメージに合った楽曲が演奏されます*4.その後はストーリーに合わせてダンスの激しい曲やコーラス曲,ソロ曲などが演じられ,大抵壮大な曲で前半を締めます.その後休憩があり,後半の初めに再びインストだけの楽曲が演奏され,ストーリーが進み,クライマックスに再び壮大な曲を演じ,フィナーレ,という流れです.

このようなテンプレート構成には必ず意味があります.ミュージカルに行くと大抵席でおばちゃんがペチャクチャ喋りたくっており*5,そのままだととてもミュージカルを聞く雰囲気ではありません.ですのでまずovertureを通じて,観客を日常から非日常に引き込む必要があります.

www.youtube.com

自分が一番好きなCATSのovertureを貼り付けてみました.CATSという化け猫どもの不思議な世界をまさに表現する楽曲になっているのではないでしょうか.

www.youtube.com

ライオンキングにはovertureはないのですが,その役割を担っているのがサークル・オブ・ライフです.劇団四季でライオンキングは2回CD化されていますが個人的には上に貼った1999年版の方が圧倒的に良いです.というかミュージカルは大抵海外の方がいいんですがライオンキングに関してだけは圧倒的に日本の劇団四季バージョンの方が良いです.ミュージカルの歌詞を日本語に訳す際大抵無理のある役になったりそんなこと原曲で言っていないわ!って感じになるんですがライオンキングに関してだけは全然そんなことなくてむしろ日本語の方がいいというか,生きていく道標 命はめぐる ザ・サークル・オブ・ライフですよほんともう日本語の力強さが一手に集まっていて本当にいいですよね

とまあ,開始と同時にラフィキの圧倒的な独奏とコーラス隊の迫力ある歌唱をもって「命の輪廻」を表現されたら,もう拍手喝采,観客の心は一つになるというものです.

代表曲の存在

もう一つ,ミュージカルの構成を語る上で大事なのは「代表曲」,つまりそのミュージカルを表すような曲が,大抵前半と後半に一つずつあるということです.ライオンキングだと前半の「ハクナ・マタタ」,後半の「お前のなかに生きている」が当てはまるでしょう.

CATSの構成について,曲を全て完成させたアンドリュー・ロイド=ウェバーがCATSに「代表曲」がないことに気づき,最後に「Memory」を追加した,という逸話があります.

www.youtube.com

その結果,CATSと「Memory」は世界的に有名な名作ミュージカルの一つとして広く認知されるに至りました.劇団四季のMemoryは日本語訳のせいで全然好きじゃないんですけどね

曲には全て意味がある

定期的に開催されるミュージカル公演,別に一度見てしまえば二回いく必要ってほとんどない,それこそキャストくらいしか違いはないわけです.それでもみんな何回も通う理由ってたった一つで,代表曲を聴きにいっているんです.CATSのMemoryが聴きたいんです.

もちろん,では代表曲だけ歌えばいいという話でもないです.さまざまな曲をストーリーに載せて演じることで観客を飽きさせず,新たな発見を生み出し,そして代表曲を聴くための万全のテンションに持っていく必要があります.全ての公演曲にはそれぞれ意味があり,作曲家や作詞家の意図が必ず込められています.

AKBの劇場公演曲にも全て意味がある

さてAKBの話に戻ると,今まで見てきたAKBの劇場公演,特にちゃんとお金をかけて*6構成されたものは明らかにこの「流れ」を意識しています.

僕の太陽公演だと,ミュージカルのovertureに対応するのはまさに「Dreamin' girls」でしょう.この楽曲だけ明らかに他のAKBの楽曲と比べて異彩を放っていますが,これは観客をまず日常から非日常の世界へ誘う働きを担っています.表題曲について,アンコール前と後から一つずつ選ぶなら,「夕陽を見ているか?」と「僕の太陽」になるでしょう.

逆上がり公演はかなり特殊なのですが,ミュージカルのovertureに対応するのは「掌」と「逆上がり」になると思っています.本当は初めに「逆上がり」を持ってきて,逆上がり公演ってなんか元気な雰囲気の公演なんだ,と観客に伝えたかったんだと思いますが,1曲目に「逆上がり」を持ってくるとそれこそ観客の心が置いてきぼりにされてしまいます.そこで「掌」というバラード曲を最初に持ってくることで,まずアイドルと観客の心を一つにする,まさに逆転の発想の構成だと感じています.表題曲は諸説ありますが「街角のパーティ」と「To be continued.」になるのでしょうか.

overtureの役割を担う曲,表題曲の役割を担う曲があり,それ以外の曲はそれらを自然に繋げ,かつ観客を飽きさせないように,とても丁寧に配置されています.ミュージカルと違いストーリーがない分,どの曲も似たような曲が連続することなく,さらにキャストの魅力を毎公演ごとに新しく発見できる構成になっていると感じています.

新公演の構成は

今回の新公演ではシングルのカップリング曲が中心となって構成されており,マイナー曲,AKBのコアなファンでも新鮮な気持ちで楽しめるように意図されています.そのこと自体は喜ばしいことなのですが,それが本当に上で説明したような「公演」の体をなしているのかについては,私としては疑問に思いました.

まずovertureの役割を担う曲が存在しません.「ロマンス、イラネ」が日常から非日常に誘うほどの力があるように感じませんでした.表題曲は何になるんでしょうか.あえて選ぶなら「性格が悪い女の子」と「僕にできること」になるのでしょうか.他の公演と比べるといささかパワーに欠けます.

カップリングに限定しているから仕方ないとはいえ,それ以外の曲も似たような曲調が続いてしまっています.曲を一つ一つ聞けばどれも魅力的なのですが,「公演」にはいわゆる汚れ役,構成の流れのために入れる突拍子もない曲が必要だと感じています.逆上がりでは例えば「その汗は嘘をつかない」や「ハンパなイケメン」とか,僕太だと「竹内先輩」とか,単発で聞くとなんやこの曲?という感じなのですが,それでも公演に必要不可欠なピースです.

その結果,私は新公演初日,劇場の世界に十分入り込むことができなかったです.これが数千人のキャパの箱のAKBマイナー曲ライブならめっちゃ良いセトリなんですが,公演ってあくまで日常の延長線上にあるべきと考えています.今回の新公演は1回見れば満足してしまい,正直次回からどのように楽しめばいいのかすら分かっていないです.

コアなファンはきっと

ここまで述べたように,いくつかの個人的な理由,そして構成の問題から,自分はあまり今回の新公演は好きではないと感じています.もちろん,何回か見ているうちに大好きになる可能性もあり,その時はまた記事を書こうと思いますが,現時点での評価としてはかなりマイナス寄りです.

それでも,SNSを見ていると今回の新公演に好意的なファンがほとんどです*7.なので自分の意見がかなり異端だということでそれはそれで良いんですが,可能性の一つとしてはわざわざSNSにネガティブなことをオープンに書かないとか至極真っ当な理由があるでしょう.自分の推しは多分エゴサとかしないタイプですし別に認知もされてないので私自身はSNSに適当なことを書きまくっているのですが,もし結構エゴサとかするタイプの推しなら,当然嫌われたくないからネガティブなことは書かないというのもあるでしょう.

もう一つは,実際に今劇場に足を運ぶようなコアなファンは満足しているのでは?と想像しています.チケット代も高々3000円ちょっとですし,16人ものアイドルが目の前で踊ってくれるというだけで満足しそうです.実際,自分が唯一行った研究生のただいま恋愛中公演も基本口パクだったのですが,それよりもアイドルの方々を近くで見れることの嬉しさの方が勝り,あまり違和感を感じませんでした.

メンバーは本当に頑張っているから

新公演はおそらく月に1,2回しか開催できませんし,超人気メンバーが16人も出演するわけですから,今後チケットは間違いなく全完売し続けるでしょう.自分も東京に行く機会があれば絶対に申し込みます.

ですが,繰り返しになりますが,ここ数週間,メンバーの人たちが本当に頑張っている姿を見てきたから,公演のことを本気で考えて,その期待に答えようと努力して,毎日朝から晩までレッスンして,深夜ぶっ続けで練習して,前日足が動かなくなった人がいて,それでも頑張ってきた姿を見ているから,本当に勿体無い,それが今の正直な気持ちです.

 

 

 

*1:違います

*2:微妙な席しか残ってないですが

*3:最近のやつはあんま知らないですが

*4:劇団四季は残念ながら生オケではなく録音です

*5:これってもしかして大阪だけ?

*6:どっかの本で,一公演作るのに3000万円くらいかかっているというのを目にしました.今だともっとかかるでしょう

*7:AKB好きの友達がいないので他の人のリアルな意見がわからないんですが...