こんちゅう

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戦下のレシピ(一日一冊、2/27)

と言うわけで数物セミナー3日目だ.(といっても,この感想文を書いているのは翌日の帰りの新幹線の中なのだけれど)

 

今日は「戦下のレシピ」(斎藤美奈子岩波書店,2015)という本を読んだ.この本は,第2次世界大戦中の日本において,人々はいったいどのような食事をしていたのかを調べた本である.

著者は,戦時の食事を調べる手段として「婦人雑誌」を用いている.婦人誌には家事・子育て・手芸などの情報が書かれているが,その中でも特に「食」を扱う割合が多かったらしい.明治末期には既に150を超える婦人誌が発行されており,1931年には「主婦之友」が60万部,「婦人倶楽部」が55万部発行と,いかに庶民の間に普及していたかが分かる.

そのような婦人雑誌だが,そのほとんどは戦争が悪化するにつれ廃刊に追い込まれていった.そのなかでもいくつかの雑誌は,質素なつくりになりながらも,戦争中に食料が不足して困っている奥様方の助けとなるべく,数多もの「節約レシピ」を開発し,紹介している.

 

このようにこの本は一貫して「婦人雑誌」をもとにして時系列順に描かれているのだが,これがまあ面白い.政治の変化,戦局の悪化がもろに台所に影響を及ぼすのがよくわかる.本文中にて筆者は,「(戦争中に食料が不足したり,配給品を得るために何時間も並んだり空襲警報に怯え過ごすことの精神的疲労が生じたなどの事実に対し)そんなことは戦争の中の枝葉の部分でしかない,と思う人もいるだろう.でも,じつは,寝不足で重労働で飯がない,それが戦争の本質かもしれない」と述べる.戦争とは多角的なものだ.皆様もぜひ,「食」という観点から第2次世界大戦を見つめ直してはいかがであろうか.